私が育ったのは36フィートのヨットの上だった。7人の家族を乗せてしょっちゅうひっくり返るそのヨットは、マホガニー製の船体以外すべてマサチューセッツ州ボストン近郊の自宅裏庭で父が作った物である。ヨットではバランス、水の流れ、風の向きをつかむことが極めて重要だ。ほどなくして私は、世界は変化と動きから成り立っていることに気づいた。我々は決してとどまってはいない、眠っている時でさえも。

私は身近な素材を使用して彫刻とプリント制作をしている。私の作品の特長は、抽象的かつ装飾的でありしばしば遊び心に溢れているが、その根底に常に動きを表現していることである。

平面作品の場合、モチーフは水中や空中に浮いているかのように紙面を漂う。重力や奥行きのある外部とはまったく異質であるイメージの世界は、平面であり水平線が無いためモチーフの大小で奥行きを表現している。

作品の中の要素を繋げるにはラインまたはテクスチャを用いる。例えば、私はよく網を描く。あるいは、実際のプラスチック・ネットにインクを付けてプリント処理することもあるが、網の複雑な透過性や作品内の固体形状に対する網のうねる様なフォームが好きなのだ。

ここ数年は植物、岩石、魚などの自然にある幾何学的な形状や要素をミックスしたり、プラスチック、広告、TVアニメなどに使用されている馴染み深い都会的な色を使用したりして楽しんでいる。

私の作品から現代的でありながら時間の枠にとらわれない印象を感じ取っていただけたら幸いである。